親から相続した実家の片付けが進まず、膨大な荷物を前に立ち尽くしてはいませんか。「荷物を空にしないと売れない」という不動産業者の言葉や、数十万円にのぼる片付け費用の見積もりに、売却を諦めかけている方も少なくありません。しかし、実は「残置物がある状態」こそが、今の不動産市場では賢く、スピーディーに売却を進めるための絶好のスタートラインなのです。この記事では、手間も費用もかけずに実家を現状のまま売却するための具体的なノウハウと、荷物の中から価値を見つけ出し、売却価格を最大化させるプロの技を詳しく紐解いていきます。
残置物がある空き家でも現状のまま売却できる本当の理由
「実家に荷物が溢れているから、まずは自分たちで片付けなければならない」という考えは、今の不動産売却においては必ずしも正解ではありません。むしろ、無理に片付けようとして挫折し、売却のタイミングを逃してしまうことの方が大きな損失につながります。
空き家特有の「現状渡し」という売却手法とは
不動産取引には、建物を修繕したり荷物を撤去したりせず、今の状態のまま引き渡す「現状渡し(現況渡し)」という手法があります。特に空き家問題が深刻化している昨今、この現状渡しでの取引は一般的になっています。
買主が個人の場合、確かに「綺麗な状態」が好まれますが、「不動産買取業者」が買主となる場合は話が別です。彼らは買い取った後にリフォームや解体を前提としているため、中に荷物が残っていても、それを含めてビジネスとして処理するノウハウを持っています。
プロの業者が残置物ありの物件を好んで買い取る裏事情
意外に思われるかもしれませんが、プロの買取業者は残置物がある物件を拒みません。それどころか、荷物があることで「この売主は急いでいる」「手間を省きたいと考えている」というニーズを察知し、スピーディーな提案につなげてくれます。
また、業者は独自のルートで不用品回収やリサイクル業者と提携しているため、個人が依頼するよりもはるかに安価に荷物を処分できます。このコストメリットがあるからこそ、残置物がある状態でも問題なく買い取ることができるのです。
自分で片付ける場合と業者に任せる場合のトータルコスト比較
実際に、どれくらいのコスト差が出るのかを比較してみましょう。以下の表は、一般的な4LDKの戸建て住宅(荷物多め)を想定した比較です。
| 項目 | 自分で片付ける(DIY) | 専門の片付け業者に依頼 | 不動産買取(現状渡し) |
|---|---|---|---|
| 作業期間 | 数ヶ月(週末利用) | 1〜3日 | 最短即日 |
| 主な費用 | ゴミ袋代、レンタカー代、交通費 | 30万円〜80万円 | 0円(売却額から調整) |
| 精神的負担 | 非常に大きい(思い出の品で手が止まる) | 中程度(立ち会いが必要) | 極めて小さい |
| 肉体的負担 | 非常に大きい(腰痛や怪我のリスク) | 小さい | ゼロ |
このように、一見「自分たちでやった方が安上がり」に見えるDIYも、遠方の実家への往復交通費や自分たちの人件費、そして何より「終わりの見えない疲弊」を考慮すると、決して合理的とは言えません。専門業者に依頼する場合、30万円〜80万円という見積もりは決して珍しくありませんが、買取業者に任せればこの費用を売却代金から相殺できるため、実質的な初期費用は0円となります。
荷物だらけの実家をそのまま売却する4つの圧倒的なメリット
残置物があるまま売却することは、単なる「手抜き」ではありません。戦略的に手間とコストを削減する、非常に合理的な選択です。
片付けの手間と時間を大幅にカットできる
実家の片付けは、単なるゴミ捨てではありません。一つひとつの品に親の思い出が詰まっており、アルバムや手紙を見つけては手が止まってしまうものです。これを無理に自分たちで進めようとすると、精神的に追い詰められてしまいます。
現状渡しなら、作業は「必要な形見」を数箱分持ち出すだけで完了します。 残りの膨大な家具や家電、衣類はすべて業者が引き受けてくれるため、売却活動を停滞させる要因を根本から取り除くことができます。
多額の不用品回収費用を支払わずに済む
「まず片付けてから売り出す」場合、売却代金が入ってくる前に、多額の処分費用(数十万円単位)を現金で用意しなければなりません。これは家計にとって大きな負担です。
一方、買取業者に「残置物込み」で依頼すれば、処分費用は売却価格から差し引かれる形になります。つまり、手元の現金を持ち出すことなく、実質的に処分費用を売却代金で相殺できるのです。
遠方の実家でも一度も帰省せずに売却が完了する
遠方に住んでいる方にとって、片付けのための帰省は時間的にも経済的にも大きなコストです。
- 新幹線や飛行機の往復運賃
- 宿泊代
- 貴重な有給休暇の消化
これらを繰り返しているうちに、気づけば片付け費用以上の出費になっていた、というケースも珍しくありません。
現状渡しを前提とした売却であれば、最初の内覧や重要事項の確認以外、ほとんど現地に行く必要はありません。最近ではオンラインでの査定や契約も進んでおり、「一度も帰省せずに実家が片付き、売却が完了した」という事例も増えています。
遺品整理と不動産売却を一括で行うことでトラブルを回避
親族間での「誰が片付けをやるのか」「費用は誰が持つのか」という揉め事は、空き家相続における最大の火種です。特定の相続人に負担が偏ることで、修復不可能な関係悪化を招くこともあります。
不動産買取業者に一括で任せてしまえば、「プロがすべて一括処理する」という客観的な解決策を提示できます。費用も売却代金から平等に差し引かれるため、透明性が高く、親族間のトラブルを未然に防ぐことができるのです。
残置物ありで売却する際に直面するリスクと賢い回避術
もちろん、メリットばかりではありません。何も知らずに売却を進めると、不当な値引きや契約後のトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
一般的な不動産仲介では「大幅な値引き」を要求される罠
もしあなたが「不動産仲介(個人への売却)」で、残置物があるまま売り出した場合、買主(個人)からは以下のような指摘を受ける可能性が高いです。
- 「不衛生に見える」
- 「自分たちで片付けるから、その分100万円値引きしてほしい」
個人の買主は、残置物の処分費用を過大に見積もる傾向があり、結果として相場よりも大幅に安い価格で買い叩かれるリスクがあります。
これを避けるためには、個人向けの仲介ではなく、最初から「現状渡し」を専門とする買取業者に相談するのが鉄則です。
「契約不適合責任」による売却後のトラブルを防ぐ特約の結び方
古い家を売る際に最も怖いのが、売却後にシロアリや雨漏りが見つかり、損害賠償を請求される「契約不適合責任」です。特に残置物が多いと、床下や壁の状態を正確に把握できないため、このリスクが高まります。
回避策は、「契約不適合責任を免除する」という条件で買い取ってくれる業者を選ぶことです。買取業者はプロであるため、この責任を負わない契約(免責)に応じてくれるケースがほとんどです。契約書を交わす際には、必ずこの項目を確認しましょう。
残置物の中に眠る「重要書類」や「権利証」を紛失しないための対策
業者がすべて処分してくれるからといって、すべてを任せきりにするのは危険です。特に以下のものは、業者に依頼する前に必ず自分の手で確保しておかなければなりません。
- 不動産の権利証(登記済証・登記識別情報通知)
- 親の通帳、実印、貴金属、有価証券
- 親族の連絡先が記された住所録
- 相続手続きに必要な戸籍謄本や遺言書
これらを紛失すると、売却手続きそのものがストップしてしまいます。業者が入る前に、最低限「貴重品が入っていそうな引き出し」だけはチェックしておきましょう。
実家の中に眠っている可能性がある「お宝」と買取の活用法
「実家にあるのはゴミばかり」と思い込んでいませんか? 実は、自分たちには価値がないように見えても、市場では高値で取引される「お宝」が眠っていることが多々あります。
古い家具や家電だけじゃない!意外と高値がつく骨董品や趣味の品
以下のようなアイテムは、捨ててしまえば「費用がかかるゴミ」ですが、売れば「現金」になります。
- 茶道具、書道具、掛け軸:古いからと捨てられがちですが、作家物であれば数十万円になることも。
- 古いおもちゃ、ソフビ人形、レコード:昭和レトロブームにより、マニアの間で高騰しています。
- 贈答品の食器、タオル、石鹸:未使用であれば、まとめ買いされる需要があります。
- 切手、古銭、カメラ:遺品整理で最も多く見つかり、かつ換金性が高いアイテムです。
着物や洋服を捨てる前に試すべき「出張買取」の賢い使い方
特に処分に困るのが「着物」や「大量の洋服」です。これらをゴミとして出すには重く、費用もかかります。そこで活用したいのが「出張買取サービス」です。自宅まで査定員が来て、その場で現金化してくれます。
ポイントは、「不動産の査定を受ける前に、不用品買取だけを先に行う」ことです。部屋の荷物が少し減るだけで、不動産業者の印象が良くなり、査定額のアップにつながる可能性があるからです。
失敗しないための空き家残置物売却の具体的4ステップ
それでは、具体的にどのような手順で売却を進めればよいのでしょうか。失敗しないための4つのステップを解説します。
ステップ1:法的に必要な書類と形見の品だけを自分で確保する
まずは、先ほど挙げた「権利証」や「貴重品」などの重要書類を確保します。これに加えて、家族にとって本当に大切な「思い出の品(写真など)」だけをピックアップします。コツは、「迷ったら残す」のではなく「絶対に必要なもの以外は置いていく」という強い決意を持つことです。
ステップ2:残置物対応が可能な不動産買取業者3社に査定を依頼
「空き家 買取 残置物 相談」などのキーワードで検索し、実績のある業者をピックアップします。必ず3社以上に査定を依頼してください。1社だけでは、提示された「処分費用」が妥当かどうかの判断がつかないからです。
ステップ3:査定額に含まれる「撤去費用」の内訳を厳しくチェック
査定書を受け取ったら、単に「合計金額」を見るのではなく、その内訳を確認します。「残置物撤去費用:50万円」と記載されていた場合、その根拠を尋ねてみてください。「もっと安くなりませんか?」と聞くよりも、「他社では不用品買取を組み合わせることで、もっと安く提示されました」と伝える方が効果的です。
ステップ4:売買契約書に「残置物の所有権放棄」を明記して完了
契約時には、「本物件内の動産(残置物)の一切の所有権を放棄し、売主は処分に関していかなる異議も申し立てない」という趣旨の文言を入れてもらいます。これにより、売却後に「あのタンスを返してほしい」といったトラブルを防ぎ、完全に手離れすることができます。
不動産買取業者に「残置物ごと」高く買ってもらう交渉術
業者の言いなりにならず、少しでも有利な条件で売却するための交渉テクニックを紹介します。
「荷物があるから安くなる」という営業トークを鵜呑みにしない
一部の業者は「荷物が多いので、相場より200万円安くなります」といった極端な提示をすることがあります。しかし、一般的な4LDKの片付け費用はせいぜい50万〜80万円程度です。「荷物の有無による価格差が、実際の処分費用の相場と乖離していないか」を冷静に突き止めましょう。
地域の空き家再生プロジェクトに強い業者を見抜く質問
「この物件を買い取った後、どのように活用する予定ですか?」と質問してみてください。「ただ壊して更地にするだけです」という業者よりも、「リフォームして再販します」「賃貸として活用します」という出口(活用方法)を持っている業者の方が、より高く買い取ってくれる可能性が高いです。なぜなら、彼らにとっては「建物そのもの」に価値を見出しているからです。
空き家の残置物問題を解決して「心の整理」をつけるために
空き家を売るということは、単に不動産を現金化することではありません。親が築いてきた生活の軌跡を整理し、自分たちの未来へ一歩踏み出すための「心の整理」でもあります。
放置すれば固定資産税が最大6倍になるリスク
「特定空家」や「管理不全空家」に指定されると、住宅用地の特例が解除され、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がるリスクがあります。荷物があるからと放置せず、早めの決断が最大の節税対策となります。
3000万円特別控除の適用を受けるための条件
相続した空き家を売却する際、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例がありますが、これには「一定の耐震基準を満たすこと」または「更地にして売却すること」などの厳しい要件があります。残置物がある状態で売却する場合でも、この特例が適用できるか、事前に税理士や専門業者に確認しておくことが重要です。
荷物がある今の状態こそが「最短売却」へのスタートライン
「荷物を片付けてから」ではなく、「荷物があるからこそ、プロに丸投げして最短で売る」。この発想の転換が、あなたのストレスを劇的に減らし、実家の価値を損なうことなく次へと繋げる鍵となります。
まずは、あなたの実家の現状をそのまま受け入れてくれるプロの査定を受けることから始めてみてください。それが、長く重かった「実家問題」を終わらせるための、確実な第一歩になるはずです。


