相続した実家を売りたいけれど、古い建物が残ったままで買い手が見つからず、途方に暮れていませんか。建物がボロボロな場合、不動産会社から「更地にして売る」ことを提案されるケースが多いですが、そこには高額な解体費用や増税リスクなど、避けては通れない壁が立ちはだかります。
安易に解体してしまう前に、まずは「更地売却が自分にとって本当に得なのか」を見極めるための知識が必要です。本記事では、解体費用の相場から2024年最新の税制改正、知っておくべきリスクまで、プロの視点で徹底解説します。
迷ったらここをチェック!空き家を更地にして売却すべき3つのケース
空き家を処分する際、現状のまま「古家付き」で売るか、解体して「更地」にするかは大きな分かれ道です。以下の3つのケースに当てはまる場合は、更地にしたほうがスムーズかつ有利に売却できる可能性が高いと言えます。
築30年超で「住める状態」にない古家!解体して土地の価値を最大化する
建物が耐用年数を超え、雨漏りやシロアリ被害が深刻な場合、買い手が住宅ローンを組むことが難しくなります。また、大規模なリフォームが必要な物件は、買い手の心理的ハードルも高くなりがちです。
こうした「建物の価値が実質ゼロ」の物件については、あらかじめ更地にしておくことで「すぐに新築が建てられる土地」として売り出すことができ、デベロッパーや注文住宅を検討している層へのアピール力を最大化できます。
契約不適合責任が怖い!見えない建物のトラブルから売主を守る「更地渡し」
中古住宅を売却すると、売却後に雨漏りなどの欠陥が見つかった際、売主が修理費用を負担する「契約不適合責任」を負うリスクがあります。特に空き家は管理が行き届かず、内部の劣化が進んでいることが多いため、売却後のトラブルが起きやすいのが実情です。
建物を解体して更地にすれば、建物に関する損害賠償リスクを根源から断つことができ、精神的・経済的な安心感を得たまま取引を完了できます。
人気エリアの土地快適!ハウスメーカーの買い手が飛びつく「建築条件なし土地」
立地が良く、土地そのものの需要が高いエリアでは、既存の建物はむしろ「障害」とみなされることがあります。新築を検討している人は、自分たちの好みの家を建てたいと考えているため、「解体済みの更地」であることは大きなメリットになります。
特に「建築条件なし」の土地は、どのハウスメーカーでも建てられるため非常に人気があり、更地化によって売却価格を競り上げるきっかけにもなり得ます。
放置厳禁!空き家を更地にした場合に直面する「お金」の現実
更地化のメリットばかりに目が向きがちですが、慎重に検討すべきなのが「税金」と「費用」の関係です。特に、更地にした翌年からの固定資産税には注意が必要です。
住宅用地特例が消える!固定資産税が実質約4倍に増額されるメカニズム
通常、家が建っている土地は「住宅用地の特例」により、固定資産税が最大で6分の1に軽減されています。しかし、建物を解体して更地にしてしまうとこの特例が解除されます。
以下の表に、建物がある場合とない場合の税負担の違いをまとめました。
| 土地の区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200平米以下) | 評価額 × 1/6 | 評価額 × 1/3 |
| 更地(非住宅用地) | 評価額 × 70%(負担調整あり) | 評価額 × 70% |
実質的には、更地にすることで固定資産税は元の約4倍程度に跳ね上がることが多いです。売却に時間がかかればかかるほど、この重い税負担がのしかかるため、解体のタイミングは戦略的に決める必要があります。
「解体して更地」にしても売却価格が上がらない!?損益分岐点の見極め方
多くの方が「更地にすれば解体費用分くらいは高く売れるだろう」と期待しますが、現実は甘くありません。査定額は周辺の「土地相場」によって決まるため、解体費用を全額売却価格に上乗せできるとは限らないからです。
例えば、土地相場が2,000万円の場所で200万円かけて解体しても、売却価格が2,200万円になるとは限りません。「解体せずに売り出して値引き交渉に応じる」ほうが最終的な手残りが多くなるケースもあります。
空き家特例「3000万円控除」を受けられるか!更地にするタイミングの重要性
相続した空き家を売却する場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)があります。
この特例は令和9年(2027年)12月31日まで延長されました。また、2024年(令和6年)からは「買主が譲渡後に解体した場合」でも適用を受けられるようになるなど、要件が大幅に緩和されています。ただし、相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円に制限されるといった変更点もあるため、最新の要件を不動産会社に必ず確認してもらいましょう。
空き家の解体費用を最小限に抑える!損をしないためのコスト削減術
解体工事は100万円単位の大きな出費です。少しでも負担を減らすために、以下のポイントを意識してください。
構造別(木造・鉄骨・RC)の最新坪単価と解体工事の諸経費内訳
建物の構造によって、解体費用は大きく変動します。ここでは一般的な木造住宅を中心とした相場の目安を挙げます。
- 木造住宅: 1坪あたり4万〜5万円程度
- 鉄骨造住宅: 1坪あたり6万〜7万円程度
- RC造(鉄筋コンクリート): 1坪あたり8万円以上
これに加えて、廃材の処分費や重機回送費、さらにアスベスト(石綿)が含まれる場合は別途高額な除去費用が発生します。一社だけの見積もりで決めず、必ず複数の解体業者から相見積もりを取ることが必須です。
空き家対策の補助金・助成金!実質負担を数百万円単位で減らす裏ワザ
現在、多くの自治体が「空き家解体費用の補助金」を設けています。条件によっては、解体費用の3分の1〜半分(上限50万〜100万円程度)が補助されることもあります。
ただし、補助金は「解体工事の着工前」に申請が必要なケースが大半です。勝手に解体を始めてしまうと一円も受け取れなくなるため、必ず自治体の窓口や、地域の制度に詳しい不動産会社に相談しましょう。
失敗しないために知っておくべき「古家付き」と「更地」の徹底比較
「更地にする」という決断をする前に、必ず踏まっておくべきリスクが「再建築不可」の概念です。
まさかの「再建築不可」!一度壊すと土地の価値がゼロになる危険な物件
道路に接する幅が2メートルなかったり、セットバックが必要な土地など、建築基準法の条件を満たしていな「再建築不可」物件は意外と多いものです。こうした物件を一度解体してしまうと、二度と新しい家を建てることができません。
そうなると土地の価値は激減し、駐車場や物置程度にしか使えなくなります。自分の土地が再建築可能かどうかを調べずに解体することは、絶対に避けてください。
「古家付き土地」として売り出し、成約後に解体する「更地渡し」の賢い活用
更地にする勇気が出ない場合は、「古家付き」で売り出しつつ、売買契約が成立した後に売主の負担で解体する「更地渡し」という手法があります。
これなら、買い手が見つかるまでは固定資産税の優遇(1/6)を維持でき、売れ残った時の税金リスクを回避できます。さらに2024年の改正により、買主側での解体でも特例が受けられるようになったため、交渉の幅が一段と広がっています。
更地売却を成功させる!信頼できる解体業者と不動産会社の見つけ方
最後に、売却を成功させるための実行計画についてのポイントをまとめました。
売却を焦らず、以下の3点を確認しながら進めてください。
- 解体業者選びを不動産会社任せにしない: 不動産会社の仲介手数料などが上乗せされている場合があるため、自分でも見積もりを取る。
- 近隣への配慮を怠らない: 解体時の騒音や粉塵はトラブルの元。丁寧にあいさつ回りを代行してくれる業者を選ぶ。
- 解体後の管理を計画する: 更地にした後も雑草対策が必要です。売却が決まるまでの管理を不動産会社と決めておきましょう。
「更地にしてから売る」のが正解か、「古家付きで売り出す」のが正解かは、その物件の個別事情によって180度変わります。まずは、複数の不動産一括査定サイトを利用して、「現状ならいくらか」「更地ならいくらで売れそうか」のシミュレーションを比較することから始めてみましょう。

